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ワタクシ@yu_kuboが見てきたこと作ったもの思ったことなどのメモ置き場

特別企画展 記念講演会「巨大翼竜は飛べたのか」@豊橋市自然史博物館

夏休みは各地の博物館で子供たちにアピールする企画展が開催されています。豊橋市自然史博物館では「天空を制した巨大翼竜と鳥たち」と題した特別企画展が開かれています。

豊橋市自然史博物館 - 第30回特別企画展「天空を制した巨大翼竜と鳥たち」

それを記念した講演会「巨大翼竜は飛べたのか(佐藤克文・東京大学大気海洋研究所教授)」を聞きに行ってきました。

豊橋市自然史博物館 - 特別企画展記念講演会「巨大翼竜は飛べたのか―論文発表の反響とその後の進展」

 

豊橋停車の朝の「ひかり」で東京駅から移動。豊橋に行くのはユカギルマンモスを見に行ったとき以来です。

 

講演会は午後からなので,まずは特別企画展「天空を制した巨大翼竜と鳥たち」の会場へ。会場に入るとまず見えるのが・・・

 

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ケツァルコアトルスのレプリカ。ケツァルコアトルスは北アメリカの8400〜6600万年前の地層から発掘された巨大翼竜です。このレプリカは北九州市いのちのたび博物館からもってきたもののようです。それにしてもデカイ。翼開長は10mあります。

 

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このアングルから見ると,歩いているヒトを獲物と認識しているかのようです。

 

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黄色の大きいのはアルゲンタビス・マグニフィケンス。800〜500万年前のアルゼンチンにいた絶滅鳥類。翼開長は7〜7.5m,体重は70〜80kg。右上の小さい茶色が現生最大の鳥類ワタリアホウドリ。翼開長は3m,体重は 10〜12kg。大きい茶色はペラゴルニス・サンデルシ。アメリカ・サウスカロライナ州の2800〜2500万年前の地層から発掘された絶滅鳥類。翼開長は6〜7.4m,体重は22〜40kg。こいつらも十分にバケモノですな。

 

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今回の講演会の講師,佐藤克文先生はバイオロギングの研究者です。バイオロギングとは,動物にデータロガーを取り付け,動物自身に行動記録を取ってもらうことです。上の写真はオオミズナギドリの剥製とデータロガーの搭載の様子。データロガーに搭載するセンサーは,加速度計,速度計,水深計,気圧計やGPSなどを研究の目的に応じて選びます。講演会では,腹側に取り付けたビデオカメラによる捕食の様子も見せていただきました。

 

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大量に漂着したハシボソミズナギドリから取った骨格標本。個体差が興味深い。胸骨の筋肉が付着する突起が,真っ直ぐなものもあれば左右に蛇行したものも。

 

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こちらは歯のように見えて歯じゃない。単にくちばしの一部が突き出して尖っているものだそうです。

 

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この揚力の説明に疑問を感じつつ常設展へ。

 

 

 

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公園内のレストランで昼食後はいよいよ講演会場へ。会場の座席数は100くらいでしょうか。客層は小学生からおじいさんおばあさんの世代まで。

 

佐藤先生の講演は,聞きに来た子供たちへ気遣いからスタートしました。「私の話は,みなさんをがっかりさせてしまうかもしれませんが・・・」

 

先生の主張の要旨を,私の理解の範囲で簡単にまとめるとこんな感じ。

滑空を主体とする鳥でも滑空中はときどき羽ばたいて加速する必要があり,これは持続可能な経済的な羽ばたきと見なせる(巡航羽ばたき)。

離陸するときには,滑空の途中の羽ばたきよりも激しく羽ばたくが,これは筋力のほぼ最大能力と見なせる(最大羽ばたき)。

現生の5種のミズナギドリ目の鳥類(滑空を主体として飛行する)からバイオロギングで得たデータによると,ミズナギドリ目の鳥類の巡航羽ばたき周波数は体重のマイナス6分の1乗に比例するのに対し,最大羽ばたき周波数は体重のマイナス3分の1乗に比例する。

つまり,体重が重くなると最大羽ばたき周波数は大きく低下し,巡航羽ばたき周波数に追いつかれてしまう。

 

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このふたつの周波数(上写真のHigh:最大羽ばたき周波数とLow:巡航羽ばたき周波数)は体重41kgのところで交差し,これが滑空を主体とする飛翔性生物の体重の上限であると考えられる。

翼竜も滑空を主体として飛行していたと考えられている。

これを巨大翼竜に適応すると,体重70kg,翼開長10mのケツァルコアトルスはこのままでは飛べない。

 

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そもそも,ケツァルコアトルスの推定体重70kgはどうみても軽すぎる。

 

それでも飛べるようにするためには,中生代の大気密度が大きかった,あるいは,中生代の重力加速度が小さかった,などの条件が必要。「重力加速度が昔は小さかった可能性を何度も物理学者に聞いたんですよ。でもねー」と佐藤先生とても残念そう。そういえば古生代は酸素濃度が高くて翼開長70cmもあるようなトンボ(メガネウラ)が飛んでたよなーなんてこと思い出しながら先生の話を聞いてた。六フッ化ウランを主成分とする大気ならあるいは???

 

講演会の最後に残念そうに先生が語っていたのが,古生物学者からの建設的な反論が未だにないということ。先生は,ケツァルコアトルスの推定体重が小さすぎるという主張もされていて,こちらは最近の古生物学者の論文で,先生の主張する体重240kgが取り上げられることが多くなっていて,ちょっとガッツポーズな感じでした。

推定翼開長が間違っている可能性は十分にありそうです。というのは,これら巨大翼竜や巨大絶滅鳥類で発掘されているのほとんどの場合上腕骨だけだということだから。前腕骨や指骨,初列風切羽の化石は発掘されていないので,同種の,より小さい動物の体から推定するしかないのです(小型の翼竜では,全身骨格だけでなく飛膜の痕跡も発掘されています)。そしてそれが間違いの元なのかも。

 

講演会後の質問コーナーで質問しました。この質問はどちらかというと講演会を聞いてのものではなく,先生の著書を読んでのものだったのですが,以下のような返事をいただきました。

Q:加速度センサーの測定軸と体軸のズレはどのように補正しているのか。

A:一緒に搭載している深度計で潜水から浮上に移る瞬間は体の向きは水平とみなせるので,そこから補正するなどしている。

Q:加速度センサーでの前進の減速と後進の加速はどう区別しているのか。

A:原理的に区別できないのはその通り。なのでこれもGPSなのど他のセンサー情報を利用して判断している。

 

講演会のスライドを含むその他の写真はこちら↓ 

2015-07 toyohashi museum of natural history | Flickr - Photo Sharing!

 

 

 

さて今週末は神奈川県立生命の星・地球博物館でゲッチョ先生(盛口満さん)と川島画伯の講演会です。これもたいへん楽しみ。予約不要(先着300名)なのでみなさんもぜひ!

特別展関連講演会 特別講演会「サイエンスにおける生物画とその世界」 | 神奈川県立生命の星・地球博物館